7日目-その5 箱根宿→小田原宿 東海道路線バスの旅(2023年1月6日)

箱根宿→小田原宿

日没が迫る中、あえて始発バス停の箱根町から乗車します。
バス停の隣は箱根駅伝の折り返し点で、つい1週間もしない頃、テレビで往路ゴールの様子を見ていたことを思い出しました。

芦ノ湖
箱根駅伝栄光の碑

こんな険しい山中まで走って来るなんて、なんと馬鹿げたことを始めたものだと思いましたが、箱根駅伝の前身は大河ドラマ「いだてん」の主人公、金栗四三が始めた「東海道五十三次駅伝」なんですよね。

これは本当に実施されたようで、京都の三条大橋をスタートし、516kmの間を23人がタスキをつなぎ、44時間余りで上野の不忍池へゴールしたそうです。
(このため、三条大橋には今も駅伝発祥の碑が立っている)

いくらマラソン馬鹿でも、東京から京都まで走って行こうなんてイカれてるぜ、などと思いきや、さらに遡って江戸期、飛脚の時代はそれが日常であり、その職にある者はこの駅伝を毎日生身でやってたわけだから、人間と言うのは本当に凄い。

うっすらと富士山も見える

ちなみに、駅という語は今でこそ、鉄道の停車場を意味するようになりましたが、そのずっと前から馬を代え、休む場所でした。
それが故に、今も続く長距離リレーマラソンの「駅伝競技」というネーミングに繋がっています。

そんな駅伝の聖地・箱根からのコースを忠実にトレースしていくのがこの小田原行バスです。

73本目
箱根登山バス H箱根町線 小田原駅 行き

箱根町港16:55発→御幸の浜17:40着
1,340円

出発早々、元箱根港では目を疑うような大行列が迎えてくれました。
乗車口を開けるや否や、国籍も様々な人々が押し寄せ、空いていた座席はあっという間に埋まり、立ち客も含めすし詰めの状態で出発しました。

この旅始まって以来の満員御礼での運行です。三島から山登りのバスの様子を振り返ると、対照的です。
バスは芦ノ湖畔を離れると再び急激な上り坂を駆け上がり、標高874mの国道1号線最高地点を通過。
沿道には雪や氷結した池も見えます。温度計はマイナス3℃を示していました。

国道1号線最高地点
精進池

ユネッサンや小涌谷駅では大量の下車があり、車内の混雑も落ち着いてきました。

登山電車が見える
ホテル前

「ホテル前」というざっくりした停留所の前にそびえるは「富士屋ホテル」。

明治11年創業の老舗ホテルで、「外国人を対象とした本格的なリゾートホテル」をめざした建物は現存します。
創業家の山口家は代々箱根の発展に力を注ぎ、3代目の山口正造は乗合バス(富士屋自働車・現箱根登山バスの前身)の運行もはじめたそうで「THE・ホテル」と言わんとするバス停名から、その敬意を感じます。

ヘアピンカーブの連続

それにしても、急坂を駆け下りる途中、小涌園、宮の下、大平台と、箱根駅伝5区6区でおなじみの地名が次々に読み上げられていくのはなんだか面白い。さながら、駅伝中継を見ているようです。

惜しむらくは、既に日没を迎え、沿線の風景を眺められないこと。
延々と続く森の中、ナトリウム灯が険しく寂しい山道を照らしています。

湯本駅を前にして、車内はガラガラに
ひたすら山道

箱根町を出てからちょうど1時間がたつ頃、箱根湯本駅に着きました。
乗客はほとんど下車し、片手で数えるほどになりました。小田原まではあと一息。

ずっと1号線
箱根湯本駅

小田原宿最寄りは駅の手前、御幸の浜付近です。
国道1号線を忠実にトレースし続けている路線バスは、今日の宿場巡りには素晴らしい威力を発揮してくれました。
むしろ、電車を乗り継ぐより便利やないかなぁ?(それはない)

御幸の浜には18時13分に到着、運賃はまたしても最高額を更新し1,340円となりました。
乗車時間も1時間20分弱。いやぁ、今日は本当に、一気に進みました!!

9.小田原宿

本陣4軒、脇本陣4軒、旅籠95軒、人口5,404人。

後北条氏が繁栄させた城下町。箱根を控え宿場としても賑わった。
西湘地域の中心として一時期は20万人を超えた人口も、遠距離通勤を嫌う都心回帰に見舞われ減少傾向だそうです。とはいえ、この旅もいよいよ東京への通勤圏内へ入ってきたと言う事ですね。

53から始まったカウントも、いよいよ10を切りました。

清水金左衛門本陣跡
片岡永左衛門本陣跡

さすがに疲れたので投宿

無事、小田原宿にたどり着いたら、今度は次のルート探しです。
まだまだ進める時間帯ではありますが、正直、もうかなり疲れました。

日没で写真映えもしないし、今日のところは、小田原で投宿したいということで意見は一致しました。
本日最後のワークは、明日朝イチに乗車するバスを決めることです。これが決まっていないと安眠できませんから 苦笑

きらびやかな小田原の街
お、国府津行き!(東方向)

小田原駅は、何度も新幹線に乗って高速で通過していますが、今回初めて降り立ち?辿り着きました。
西湘地域の代表都市だけあって、なかなか立派で大きな駅です。駅前には繁華街が広がり、バスターミナルの下にはささやかながら地下街もあります。

まずは案内所を訪ねましたが、残念ながらすでに閉店。

閉店!
え~と…

次の宿場は大磯。
かなり距離がありますので、一本では繋がらなさそう。

ターミナルからは「国府津駅」行きと掲げたバスが出ていきますので、おそらくそっち方面だねと目星をつけつつ、乗り場案内を眺めていると…

…お?
なんじゃこりゃ??

めっちゃ小さな切れ端のように掲出された「平塚駅北口」行き

平塚なら、大磯を飛び越えて、2つ先の宿場です。

ただ、なんだか変な時刻表。

平日、運行はありません。
休日、運行はありません。
土曜、8時5分。

えっと、今日は金曜日だから…明日は土曜で…

これでええやんけ!!!

嘘!なにこれ!!

はいみなさん、これはヤラセではないですよ~。
ヤラセなら5分で「ゆいばす」を逃すとかしませんやんか~。

関西のしがないゆるバスファンである私たちが、小田原の免許維持路線※なんて知ってるわけないんです。
これは、正真正銘の、ラッキーです!!!!

静岡愛知のバス不毛地獄を生き延びた我々への、バスの女神の大爆笑ということで、週一バス、謹んで乗車させていただきます。
あーーーざーーーーーーっっっっっっす!!!!!

※免許維持路線とは
路線免許を維持するために、ごく僅かな本数だけ運行しているバスのこと。
バス路線の許認可を得るのは大変で、一度廃止してしまうとおいそれと再開できないため、廃止はせずに生かさず殺さずの状態にされている。

たしかに、7番のりばに「平塚駅」の文字がある!

ということで、安心して夕食タイムです。
呼び込みに声かけられて、一瞬めちゃめちゃ高い店に入ったんですが、メニュー見て辞退するという経験をしました。あぶねぇぇ。

結局、関東ローカルの居酒屋チェーンに落ち着いたのですが、店変わった後のメニュー見た時の安心感が凄かったです。別の国かよと思いました。

山盛りの海鮮丼!
ちょっと怪しい小田原の街

バスが見つかったからって気を抜いてはいけないという教訓を得ました。
やっぱり怖いね、知らない町で飲むのは怖い。
でも、それも含めて楽しい!!

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