第6回-中編 島田宿→府中宿 東海道路線バスの旅(2022年9月23日)

前半までのあらすじ

金谷を始発で出るために勇んで夜行入りましたが、正午を過ぎたにもかかわらず、なぜか大井川を越えただけの島田で足止めを喰らっています。巻き返し、なるか。

53本目
しずてつジャストライン 島田静波線 静波海岸入口 行き

島田三丁目東 12:20発→神戸 12:43着
440円

再び大井川を越える。
越すに越されぬ大井川も…以下略
営業所ごとのアニマルサイン、相良はカモメ

バスは途中までは先ほどの湯日線と同じような経路を、その後は吉田インターに取りつく4車線道路を快走します。
下車地点として選んだのは「神戸」。読みは「こうべ」ではなく「かんど」。

特になにかある、と言うわけではない神戸バス停

地図を見て、ここから県道79号~国道150号富士見橋方面へ路線があるはずだと予測しました。
本当はもっと吉田町の中心部へ南下した方が良い気もしましたが、本数の少ないバスとすれ違って乗り逃したりしたら悔しいですからね。

「神戸」バス停から少し北へ戻り、神戸交差点を右折するとすぐに「遠州神戸」バス停が見えてきます。
気になるバスは…あった!40分後です。

「遠州」神戸
12時台は運行無し!

しかし、なぜ島田→相良行は「神戸」で、相良→藤枝行きは「遠州神戸」なのか。
その時は疑問に思いつつも分からずじまいでしたが、後から調べたら「遠州神戸」は旧駿遠線の駅名なのでした。

駿遠線とは、袋井駅南口(通称:駿遠口)から海沿いを進んで藤枝を結んでいた静岡鉄道の軽便鉄道線です。
この旅でお世話になった秋葉バスの袋井~大東間は駿遠線の廃止代替バスとも言える区間でしたが、ここから先の藤枝相良線も同様ですね。

まっぷるトラベルガイド https://www.mapple.net/articles/bk/7983/ より引用

この遠州神戸バス停のすぐ近くに旧駅跡があり、現在は地域の自治会が当時を偲んで制作した駅名標が立っているようです。
分かっていたら見に行きたかったなぁ…。

ところが当日は、こんな呑気なことは考えていられませんでした。
不意に襲いかかる便意との攻防により…失礼、調子に乗って食べ過ぎたのか、この時猛烈にトイレに行きたくて、しかし付近は田んぼと民家と工場が混在するような風景で、つまり……

絶対に「その辺」にはできない!

急いでコンビニを探し、お腹への上下動を抑えるべく「全速力で歩む」という、忍者顔負けの高難度ミッションを遂行してきました。

結果は勝利。
こうして、「遠州神戸」は私の中でも思い出深い場所になりました。

54本目
しずてつジャストライン 藤枝相良線 藤枝駅南口 行き

藤枝駅到着後に撮影

遠州神戸 12:23発→藤枝駅南口 13:44着
440円

藤枝行きは、大井川を渡ると焼津市に入ります。と言っても、合併前の旧大井川町域。
付近には日清食品のカップ麺工場やソニーミュージックのCD工場などあります。

静岡県の中西部は交通の便が良いので日本を代表する大企業の工場や物流センターが多くありますね。
新幹線の車窓からも、資生堂、丸大食品、ポーラ、大塚製薬などの工場が見えます。

三度、大井川を越える。
越すに越…以下略
昼下がりの車内

バスは東名高速道路をアンダーパスし、藤枝駅を目指します。
乗客が増え、途中からは立ち客が出る程度になりましたが、終点ひとつ手前の順心高校前で多くの方が降りていきました。

藤枝駅は南口に到着。見覚えのある静岡空港からのシャトルバス車両も見えます。
島田から藤枝は遠かった。
否、決して遠くはないのだが、時間がかかった。由比はまだまだ遠い。

時刻は14時前、再び雨が降り出してきました。

「東海道がおもしろい」はい、そう思います

藤枝宿は藤枝駅とはかなり離れていますのでバスで行きたい。
まずはバスを探しに北口のバスターミナルへ向かいます。
すると、乗り場には「静岡」の文字が。

2番乗り場には新静岡の行き先が躍る
右端の列がすべて静岡行き。頻発!

この先、藤枝~岡部~丸子~府中の間の東海道は、鉄道とは離れたところを通るためバスが直通しています。
その名も「中部国道線」。
しかも30分間隔で走っています。

これで静岡までの道筋は見えました。
4つ先の宿場までがクリアに見通せる状況というのは、京都以来初めてです。

面白くないっちゃそうなんですが、気楽と言えば気楽です。
静岡県内はここまで苦戦続きでしたからね…。

藤枝駅北口バスターミナル

案内所で静鉄バスの全線路線図もゲットし、府中から先、興津宿までバスが通じていることも確認できました。
興津から由比、薩埵峠越えは徒歩連絡の予定です。

昼下がりのこの時間に、ようやく「微かに」ゴールが見えてきました。

55本目
しずてつジャストライン 中部国導線 新静岡 行き

藤枝駅 14:10発→上伝馬 14:17着
190円

2019年、静岡鉄道は創業100周年を記念し、復刻塗装車を投入しています。
このクリーム+ローズピンクの塗装は昭和中期の貸切・遠距離路線車のカラーリングだそうで、同時期の近距離路線車はクリーム+濃緑です。

車内にはUSB充電コンセントも!

広々とした車内で、このまま静岡まで乗ったとしても快適な移動ができそうです。

藤枝宿最寄りの上伝馬まではバス停6つ、9分の道のり。
歩くと30分くらいかかります。

瀬戸川を渡る
上伝馬で降りると、宿場町ライクな交番が迎えてくれます
22.藤枝宿

本陣2軒、旅籠37軒、人口4,425人。

雅な地名は平安時代末期、源義家が奥州へ向かう際に若一王子神社の裏山に咲く藤の花を見て詠んだ一首 「松に花、咲く藤枝の、一王子、宮居ゆたかに、いく千代をへん」 に因むと言われています。
全国的にはやはり高校サッカーで名を馳せ、ゴン中山を輩出した藤枝東高が有名でしょうか。

上本陣跡
下本陣跡

藤枝宿→岡部宿

行動食調達のために立ち寄った近くの和菓子店の女将さんが「ぜひ裏の松の木を見ていって」と仰るので、拝見しに大慶寺へ。
ここの久遠の松はなかなかの迫力で、樹齢700年ともいわれています。

久遠の松

東海道を歩いて行き交う旅人を見つめてきた大樹。
東海道沿道にはそういう樹がいくつもあり、人間の命の儚さを感じると共に、江戸時代がまるでつい最近だったような、不思議な感覚を抱きます。

若一王子神社
蓮華寺池

せっかくなので近くの蓮華寺池も一目見て、2つ先の「藤枝五丁目」から乗車します。
やや慌ただしい。

56本目
しずてつジャストライン 中部国導線 新静岡 行き

藤枝五丁目 14:47発→岡部宿柏屋前 15:09着
350円

バスは人口14万都市の焼津へは入らず、山あいの旧岡部町域へ入ります。
つまり、焼津は宇津ノ谷峠経由の東海道からは外れています。

焼津と静岡の間は、距離的には10kmあまりと近いですが、高草山から連なる峰々が海岸まで続いているため、古来より急な峠(日本坂)に往来を妨げられてきました。
平安時代までの東海道は、焼津・日本坂を通るルートでしたが、このような地形的条件を踏まえ、後に岡部・宇津ノ谷経由に変更され現在に至るのです。

ところが、現代のJR東海道線、新幹線、東名高速道路はいずれも焼津を通り、日本坂は長大トンネルでスルーしています。
このため、今の岡部は逆にメインルートから外れてしまった感があります。

車窓には畑と住宅地、そして徐々に山が迫ってくる
ところどころに松並木も

坂下と言い、白須賀と言い、東海道を旅していると、こういう土木技術と道の変遷に翻弄されてきた街がたくさん出てきます。
列車や高速道路で通過するだけでは気づかないことですが、今回バスに乗ってその一つひとつを辿るからこそ見えてくる風景でもあります。

岡部営業所。松並木の陰から、やや懐かしいシルエットのバスが見える
三菱×呉羽自動車工業製のエアロスターK、乗りたい

なお、バスの乗客は藤枝⇔静岡間の直通利用はほぼなさそうで、両端駅への移動に加え区間利用が多く見受けられました。

21.岡部宿

本陣2軒、脇本陣2軒、旅籠27軒、人口2,322人。

鉄道から離れた宿場 そのおかげか、藤枝、静岡、焼津の各方面へ向かう路線が伸び、バス旅は大変しやすい。
もともと源頼朝が敷いた鎌倉時代の東海道は、焼津から日本坂を越える今のJR東海道線に近いルートでしたが、家康の時代には岡部から宇津ノ谷峠を越える現東海道ルートに付け変わっている。

ちなみに、藤枝の観光案内所で宿場町は…と尋ねたら、いの一番に「柏屋さんですね?」と問われた。
観光スポットとしては、藤枝宿に勝る岡部宿。

本陣跡外観
本陣跡

岡部宿旅籠跡の柏屋は大規模に復元されるとともに、蔵の建物を活かしたレストランやギャラリーも併設され、道の駅のような観光スポットに生まれ変わっています。

というか、ある意味、宿場町というものが持つ機能が伝統的に「道の駅そのもの」なんですよね。
現代の道の駅は、昔の宿場や間の宿が現代風に蘇ったもの、とも言えるかもしれません。
ま、ここ(柏屋)は道の駅ではないんですけどね。

レストラン&ギャラリー
大粒の雨が水面を叩く


時折雨脚が強まりますが、幸いバスに乗ったり降りたりするタイミングなども含めた移動中は、ほとんど降られることなく来れています。
こりゃあラッキーだったねと笑い合っていましたが、まだこの時は、夕方以降に静岡県内の広い範囲を襲う未曽有の集中豪雨の気配には気付けずにいました。

それは、きっと我々だけでなく、住民の方々含め、三連休中に東海道沿線へ行楽に出かけた多くの観光客の方々も一緒だったと思います。

岡部宿→丸子宿

57本目
しずてつジャストライン 中部国導線 新静岡 行き

岡部宿柏屋前 15:39発→丸子橋入口 15:52着
370円

バスは次から次へとやって来ます。
本当はもう少しゆっくり見られる1時間間隔くらいがありがたいようにも思いますが、午前中の停滞を取り戻さねばなりません。

そもそも、先の心配をせずにバスに乗って進めるというのが、あまり経験したことの無い状態なので、どういう心持ちでいればよいのか良くわかりません。
「東海道五十三次バスハイク」とでも言ったらよろしいか。

いや、我々は最初から「それ」に臨んでいるはずなのに、幾多も襲い掛かる苦難と頭脳プレー、そして時に力技を強いられるこの状況…やはりスポーツとしか思えません。

乗客が絶えることはない
雨に煙る稜線

バスは宇津ノ谷峠に差し掛かります。
難所とされている峠道も、バスであっさりと通過。
この峠には明治、大正、昭和、平成と4つの時代に作られた4本のトンネルが通っていますが、本日は昭和のトンネルをくぐりました。

昭和の宇津ノ谷トンネル
とろろ汁の老舗「丁子屋」の目の前で下車


15分ほどで丸子宿最寄りの「丸子橋入口」へ到着しました。

20.丸子宿

本陣1軒、脇本陣2軒、旅籠24軒、人口795人。

峠を越えて安堵した旅人を癒したのが、名物のとろろ汁ということですが、いつもの如くスルーです。
相方がとろろ好きではなかったのもありますが、何せ次から次へやって来るバスの威力が強すぎる。

食事しない我らは、サクッと写真を撮って、サクッとバス停へ戻ります。
夕刻に差し掛かり、道路も混んできました。

時折雨脚が強まります。
降り方が強く夕立のようですが、長い時間は続きません。
屋根のあるバス停で良かった。

丸子宿→府中宿

58本目
しずてつジャストライン 中部国導線 新静岡 行き

新丸子 16:24発→新静岡 16:56着
320円

効率の良い乗り継ぎが続いています。

別にハプニングを期待しているわけではありませんが、こうも予定調和な感じだと逆に退屈さも感じます。
特に疲れがたまった夕方、単調になるとつい、なんでこんなところにいるんだとか、何のためにこんなことしてんだとか、そういうことを考えてしまうんだなこれが。

ただ、考えても理由は特にありません。

見た目は似ていますが少し古い年式のバスで、
最後部席の天井が低い
途中、丸子営業所の中を転回

江戸期なら、旅は目的を果たすための手段であったはずです。
令和の今、我々は旅という目的を遂行するために、この場所にいます。

安倍川を渡ると間もなく静岡市中心部です。
安倍川だって、当時は橋が無く渡るのが大変だったはずですが、年代物のトラス橋であっさりと渡河します。

駿府城跡
JR静岡駅

駿府城のスケールの大きなお堀と石垣が見えてくると、いよいよ終点の新静岡バスターミナルに到着です。
時刻は17時。由比までの到達はかなり厳しいですが、帰りの新幹線が静岡を発つタイムリミットは21時21分。

まだ4時間以上あるので、うまく繋がれば望みがないではありません。

静鉄の一大拠点・新静岡ターミナル

後編へ続く。

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