第4回-中編 吉田宿→白須賀宿 東海道路線バスの旅(2022年5月13日)

前半までのあらすじ

本宿駅を8時前に発ち、4時間。
正午前に二川宿最寄り「住宅前」バス停に到着しました。

雨脚の強まる中、二川宿へ向かいます。

33.二川宿

本陣1件、脇本陣1件、旅籠38件、人口1,468人。
小規模な宿場で、多くの人々は宿業と農業を兼業していたよう。

駅からも国道・県道からもやや離れており、そのためか開発の波に洗われることなく、細い街路には旧街道の趣が残っている。現存する本陣建築は、東海道中ではここ二川と草津のたった2か所のみと貴重。

地元の人間としては、二川と言えば宿場よりも「豊橋市動植物公園・のんほいパーク」の印象が強い。
新幹線の車窓から観覧車が見える。

旅籠清明屋(右奥)
西駒屋(右奥)、国登録有形文化財

雨の二川宿は、平日と言うこともあってか、車が行き交うばかりでひと気がありません。
とは言え、街道筋には古い家を改装したレストランやカフェなどが点在し、休憩にはもってこい。ランチ欲もくすぐられます。

しかしながら、我々には先が見えません。
先が見えない以上、見えるところまで進むしかありません。
ゆっくりランチが致命傷になり得ることを知っていますので!

二川宿→白須賀宿

これより先はバス旅にとって鬼門の県境越えです。
ここまでを振り返ると、京都→滋賀、滋賀→三重と、続けて歩いての県境越えでした。
三重→愛知は木曽岬町営バスで跨ぎましたが、直前の木曽川大橋は繋がらず歩いて渡っています。
そういう意味では、ほぼ全滅。ここ愛知→静岡も、もちろんバスはありません。

進む道も、今日の道程では初めて大きく二手に分かれます。
一つはこのまま東海道・国道1号線に沿ってまっすぐ白須賀を目指すルート。
当区間、白須賀の手前1kmほどのところにある「一里山」までは豊鉄バスの路線があるのですが、1日1本の運行で、二川発は15時台。

1日1本(4時間ぶり、2度目)

とても待ちきれないので、全区間徒歩として、白須賀までの距離は6km程度。

もう一つはJR東海道本線に沿って新所原駅を目指すルート。
もし新所原から白須賀行きが見つかれば、徒歩距離は3kmに抑えられます。
しかし、バスに乗れなければ、徒歩距離は9kmに伸びます。
なんだこの綺麗なハイリスク・ハイリターン。投資案件じゃないんだぞ。

一応、マップル上には、新所原~白須賀まで、しっかりバス停を意味する点線が示されています。
ただ、この点線、二川~一里山にも、平等に引かれています。
1日1本でも、休日運休でも、バス路線があれば、線は引かれる。
道路地図の世界では、バス路線は本数の多寡にかかわらず、バス路線なのだ。

もっと言うと、紙の地図は、廃線になっても線は勝手に消えない。
つまり、いま私達に言えることは「地図は全く信用できない」ということだけだ!!

とはいえ、決断しなければなりません。
今の我々には情報がない。判断材料がなければ、生み出すしかない。
地図を見る限り、新所原~白須賀の間にも集落は点在しているし、白須賀の最寄り駅は新所原。
同一の市内でもあるため、コミュニティバスであっても、路線存在の蓋然性は高いと判断し、新所原ルートを選択しました。

したらば、いざ!答え合わせの雨中行軍へ!!

大雨と徒歩の県境越え

東海道はつづくよどこまでも
県境…

幹線道路を歩くと、水をはねられたりして辛いので、地図を見ながら最短経路を探します。
選んだのは、東海道線の線路に沿って進む梅田川沿いの道。
この梅田川、新所原駅西方で「境川」と名前を変え、南行を始めます。
そして、その川筋が静岡・愛知県境となります。全国にどれだけあるのでしょうね、境川。

そんな境川の堤防上を、水溜まりをよけながら、飛んだり跳ねたりしながら進みます。
雨がまた、強いのなんの。

これでも我々は、東京を目指しているのだ!

脇を猛スピードで駆け抜けていく列車を恨めしく眺めながら、一歩一歩、東京へ、否、白須賀宿へと近づきます。まずは、目の前のひと区間に全力を傾けたい。そして、一つずつ着実に、バスにありつきたい。できれば、歩きたくない。

朝は歩いてみるのもいいもんだなんて言ってましたけどね、大雨となれば話は別ですよ。
ともかく、今我々にできることは一分でも早く新所原駅に着いて、バスの時刻表を確認することのみ!

天下の大動脈・東海道本線
バスだ!と思ったら天浜線のレールバスだった

二川宿を後にし、30分ほど経過して時刻は12時45分。
我々は強雨の中、無事3kmの道のりを歩ききり、新所原駅に到着しました。
ここは静岡県湖西(こさい)市。
関西人は、滋賀県の「湖西地区」「湖西線」で耳馴染みがあるからか、「こせいし」と発音したくなります。
言わずもがな、湖西市の「湖」は遠江:浜名湖、滋賀県湖西地区の「湖」は近江:琵琶湖です。

バスがいた!!

しっかし、最後ロータリーにバスが見えて、思わず走っちゃいましたよ。
もうね、目の前で逃して2時間待ちとか、そういう情け容赦ない仕打ちがね、起きるときには起きるんだわ、バス旅。
客観的に見れば、平日の昼間に、必死の形相をしたおっさんが、傘振り回しながら全力で走っているのね。でも大丈夫。この時間帯、郊外の駅前、ほぼ無人だから。
ただはっきり言いますが、会社で仕事していた方が、絶対ラクです。間違いない。

そして注目の、時刻表は…?

……!?

ない!
白須賀行きが見当たらない。
嘘でしょ!?

ちょっと、反対側の出口行ってくる!
そこで階段ダッシュですよ。
駅についても全然気が抜けません!
これだからバス旅は!!

北口

北口には、ちゃんとありました。白須賀行き。あっぶねーーーー、焦らさんといてよ。
白須賀が南の方角だから、南から出ると思うではないですか。自然に考えれば。

でも、そういうもんでもない、というのが、バス旅やってると分かってきます。
特に合理性はないけど、部外者には分からないいろいろな事情と経緯があって、そうなった。
私達地域外のユーザーは、こういうところでいちいち文句言ったり腹を立てたりせず、あくまで乗らせていただくスタンスでいれば良いのです。
他所モンにはわからぬ、何か事情があるかも知れないし、ないかもしれない。
いずれにしても受け入れる。

なすがままに、なされるがままに。
それが、バス旅なのです。そこにバスがあれば、オールOKなのです。

白須賀から先をどう進む?

現在の時刻は13時前。新所原から白須賀へ行くバス・湖西市コーちゃんバスは、14時5分発です。
今我々が知りたいのは、その先、白須賀から新居宿方面です。

地図で見ると、ここ新所原から白須賀へ向かうと、その先は2方面に分かれます。
一つは、そのまま東海道に沿って海岸近くを新居方面へ行く国道1号線ルート。
もう一つは北東へ進んで鷲津駅経由で新居方面へ抜けていく鷲津ルート。

新居方面は、もともとJRバスが走っていたのに、路線廃止の憂き目に遭ったため、現在はあまり期待できなさそうです。
一応、どちらも地図上ではバス路線を示す点線で繋がってこそいますが。

平成の大合併前から白須賀は湖西市なので、市役所のある鷲津駅方面へは便がありそうだと思いますが、情報がないので憶測にすぎません。
バス停標柱には、路線図も乗っていないし、乗り継ぎ時刻表の類もない。
JRと天浜線の駅にも、時刻表は置いていない。
ロータリーの中には、バスが止まっていますが、肝心の運転手さんの姿が見えないため、聞こうにも聞けません。

運転席に「休憩中」の札が掲出されています

待望のランチライム

新所原にはイチかバチかで来ましたが、この先も不透明感が拭えぬまま進むことになりそうです。

…というわけで、今できることは全てやりました。
なんと!14時の出発まで、待望のランチタイム!いやっほーーーー!!!

(我々のバス旅では、先が見えない中で休憩することはできませんが、次に乗るバスが決まっており、なおかつ待ち時間が数十分程度ある場合のみ、お店に入ってのランチタイムとなります。つまり、発生条件が厳しいレアイベント扱いです 笑)

新所原駅と言えば、鉄オタには有名な天浜線駅舎のウナギ屋さんがあります。
ところが、コロナ禍を機に、店内飲食を廃しテイクアウト専門店になってしまっていました。

ウナギ弁当の立て看板(左下)

いずれにしても、ウナギはちと予算オーバー。周囲を見渡すと、もう一つお店を発見。
一見するとパン屋さんに見えますが、カフェを併設しており、食事もできそうです。

ということで、今日のバス旅ランチは「cafeひまわり」さんのソースカツ丼に決まりました。
めちゃくちゃボリュームがあって、野菜もちゃんと摂れて、デザートに飲み物(コーヒーorジュース)までついて、800円台はちと感動モノでした。

ソースカツ丼

なにこれ、すごい。
京都大阪なら1,500円ランチの内容ですよ。
店員さんも親切で、たくさん歩いたご褒美をいただいた気分でした。
また来たいな~!

ゆっくりと英気を養い、14時を過ぎると、ロータリーで昼寝していたバスはエンジンをかけ、ひと気のない乗り場に横付けされました。
我々以外の旅客は1名、初老の女性です。実はこの方さっき我々が当駅に着いた時分から、ずっと待っていたご様子です。

バス旅再開

さて、バスに乗る前に、乗り継ぎの調査を敢行します。
運転手さんに「白須賀から鷲津へ行けますか?」と尋ねると、結果はなんと!
このバスが白須賀に着く僅か10分前に、最終の鷲津行は行ってしまうとのこと。
え?まだ14時で、最終…??
とにかく乗り継げない!残念!

ならば、新居方面はというと、やはりこれもない。
どうやら今から白須賀に向かっても、ここ新所原へ戻ってくるほかないようです。
して、この旅初の「ピストン本陣撮り」を実行することになりました。

いや~、正直、これは想定していませんでした。
でも、バスで行って帰ってこれるのだから、贅沢言わない。
運転手さんからコーちゃんバス全線の時刻表をもらい、白須賀往復後も、鷲津経由でどうにか夕方5時には新居町駅へ到達できるめどが立ちました。
当初思っていたよりは、だいぶスローペースですが。

39本目
湖西市コ―ちゃんバス 白須賀岡崎線 おんやど白須賀 行き

新所原駅北口14:05発→JA白須賀支店14:26着
200円

それでは、2時間ぶりにバスに乗って出発!
コーちゃんバスを運行するのは「浜松バス株式会社」。
2005年創業、合併前の旧浜北市内の路線を皮切りに運行を開始した、比較的新しい事業者です。
浜松で路線バスを運行会社と言えば長らく遠州鉄道しかなかったため、この青いカラーリングと言い、ちょっと新鮮です。

車内

この車、丸目が愛らしい「ポンチョ」と言う車種ですが、ドアが1つでちょっと長めの7mサイズです。
そして、なんとも特徴的で、どこかで聞いたドア開閉チャイム。

「ピンポンパンポーン↓♪」プシュー…
「ピンポンパンポーン↑♪」「ピンポンパンポーン↑♪」パタン…!

あぁ!大阪市バス(大阪シティバス)っぽい!!
この時は、そこで終わっていたんですが、あとからTwitter上で、本当に大阪市バスからの中古車であることを教えてもらいました。
チャイムだけでなく、椅子などの内装、屋根上のアンテナもその証拠なのだそうです。
見る人が見ると、分かるものなんですね。

久々に東海道へ合流
本陣最寄りはJA白須賀支店

バスは、20分ほどで白須賀に着きます。

32.白須賀宿

本陣1件、脇本陣1件、旅籠27件、人口2,741人。
白須賀宿、元は宿場町南端の潮見坂を下った海岸沿いにあったが、津波の被害を受け、現在の高台に移転された過去を持つ。

鉄道のルートから外れ、開発されることもなく、家並みも旧街道の面影を残す。
潮見坂からは、東海道沿線で唯一太平洋が臨め、広大な海が旅人の心を打ったはずであるが、時間と天候に難があり、今回訪問は叶わず。

白須賀宿→新居宿

白須賀は13分の滞在で、来た道を引き返します。
なにせ、それ以外に取れる道がないのです。

40本目
湖西市コ―ちゃんバス 白須賀岡崎線 新所原駅北口 行き

JA白須賀支店14:39発→新所原駅北口14:55着
200円

もし、二川から一里山方面に歩いていたら、14時16分鷲津行にギリギリ乗れていたかもしれませんが、距離を考えれば、厳しい道のりです。
少し休んだりして、この14時39分、新所原行さえ逃していたら、もうその時点で白須賀から先へのバスは一切なくなります。
そうなると、7~8km先の新居宿へ歩いていく以外に、選択肢がなくなります。

なにより、コーちゃんバス自体が、土日祝日は全便運休です。
仮に今回、宿泊を伴う行程でなく、これまで同様、土曜日帰りだったならば、おそらく新所原で途方に暮れていたことでしょう。
二川→新所原→白須賀→新居へ15km、4時間コースの歩きです。
本宿→御油の8kmを歩いたその後に、です。くわばらくわばら。

新所原行きは1日2本で、最終バス
東海道は続いている

なお、昔は二川宿~白須賀宿~新居宿の間をJRバスが一本で結んでいました。
豊橋~新居町駅の浜名線です。

1993年版JR時刻表から
1993年版JR時刻表から

そのまた昔は、国鉄バスが浜松~岡崎の間を直通させていたのですから、現代の東海道、バス旅は相当困難になっていることが分かります。
心底、今日が平日で良かったと思いました。

さて、行きの便の乗客は我々だけでしたが、帰りの便には男子小学生が一人乗っています。
そして、彼は盛んにこちらを振り返り、何度も目が合います。
うちにも同じ年頃の息子がいるので、思わず話しかけてみました。

「毎日バスで通っているの?」
「そうだよ」
「誰かお客さんが乗っていることは珍しい?」
「珍しい!」
「行きも帰りもバスなの?」
「いつもじゃないけど、送ってもらうときもある」
「バス好き?」
「好き」

静岡県西部の小学生は、登下校時にヘルメットをかぶっています。
これは自転車ではなく、徒歩やバス通学の子も同様です。
外から来ると異様な感じがしますが、私自身、浜松の生まれなので、それが当然と思い、育ってきました。
近い将来に発生が予測される東南海地震に備えた防災教育の一環かと思われがちですが、実は交通事故死を防ぐ目的で始まったことのようです。

ちなみに、私がかぶっていたのは、本当に現場へ行くようなあごひもで締める黄色のヘルメットでした。
クラスの人気者も、かわいいあの子も、みんな黄色のヘルメット。
今思えば、ちょっとシュールですね。

白須賀近傍の細い道を行く
雨は止まない

バスは家と畑が点在する丘陵地帯を行きます。
小学生を降ろし、新幹線の高架をくぐり、新所原駅へ帰ってきたのが15時前。1時間弱のピストン宿場探訪でした。

本日の拠点・新所原駅

それにしても、新所原へ着いてから2時間半が経過し、駅前の光景を見ると、ここがベースキャンプのような親近感さえ覚え始めました。
次のバスは、乗り場が変わり、最初に訪ねた南口からです。

後編へ続く。

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