6日目-前編 金谷宿→島田宿 東海道路線バスの旅(2022年9月23日)

旅の道のりは後半に入り、残りの遠征日程の調整が大変になってきました。
これまでの経験を踏まえると、静岡都市圏を抜けた先、興津宿の先から富士・沼津へと向かう中小都市が点在する静岡県東部エリアに、苦戦が見込まれます。

特に、地方の平日と土日のダイヤの間には、天国と地獄ほどの差があります。
このため、ぜひとも由比から先を平日に実施したい。

しかし、勤め人の我々が平日2連休を取るのは至難のため、平日を絡めた日程は必ず「金・土」となる。
ならば、現在地の金谷から一旦、土日の日帰りで「由比宿」へと駒を進めたい。

薩埵峠を越えるバスはないと思われ、夕方までに興津にたどり着き、歩いて山を越え宵の口の由比駅で次回の始発バスを見定め、帰路に就く。
これが今回のゴールで「在りたい姿」です。

さて、前回終了地点は金谷宿。
金谷駅前の時刻表によると、大井川を越える静鉄バスの島田行きは平日のみ運行でした。
土日の午前中はまともに大井川を超えるバスがなく、唯一頼りになりそうなのが「静岡空港行き」。
その始発は8時11分。逃すと次は11時半までありません。

ちなみに京都から始発の新幹線に乗り、最速で金谷入りする場合は8時38分着。
悩みましたが、空港行き始発へ乗車するため、夜行での静岡入りを決めました。

旅の始まりは個室寝台車

そんなわけで、金曜深夜の「サンライズ瀬戸」、中でも最も安い個室寝台・ソロに乗車します。
仕事を片付けたら、少しでも眠る時間を確保するため、三ノ宮まで移動しました。

今宵の宿
朝目覚めると、窓の外は予報通りの雨模様

およそ5時間後の午前5時26分。列車は定刻で沼津へ着きました。
ここから、鈍行で金谷へ戻ります。

完全に無駄な動きですが、夜明け前の静岡に放り出されるのはキツいので、寝台利用延長料金のようなものです。
単純に、日本唯一となった夜行寝台特急に久しぶりに乗っておきたかっただけ、とも言えます。
そこも夜行バスで一貫していないのは、私が単に鉄道ファンも兼業しているからです。

ちなみに関東出張からの帰路にある相方とは静岡駅で合流しました。
フットワークの軽いサラリーマン達だこと。

あと100分乗り続ければ、東京に着きます 笑
前回越えられなかった大井川を渡る(逆方向に)

金谷宿→島田宿

金谷には8時7分に着きました。
駅頭は前回に続き、またもや激しい雨に洗われています。
今回は晴れることを願っていましたが、残念。

二人旅だけに、晴れの日を狙って柔軟に日程を変更…とはいかず、こればかりは仕方ありません。
テレビのバス旅でも、結構雨天ロケは多かったですよね。

前段が長くなりました。
いよいよ、由比宿を目指す第6日目、出立です!

51本目
大鉄アドバンス 富士山静岡空港金谷線 富士山静岡空港 行き

雨がすごい…

金谷駅8:11発→富士山静岡空港8:24着
400円

出発前から静岡空港行きは決まっていましたが、例によってその先の路線網を把握できているわけではありません。
ただ、このバスの時刻表を見ていると、妙なことに気付きます。

この富士山静岡空港金谷線は、空港から金谷、島田を通って、空港北側の蓬莱橋の間を往復しています。
地図にあてはめてみると、まるで「C」の字型経路。

富士山静岡空港金谷線 運行経路

つまり、我々は空港で降り、そのまま徒歩で北上すれば、このバスの折り返し便の終着地・蓬莱橋に先着し、そのまま島田駅方面へ乗り継げるのでは?と考えた次第。
(そのためだけの夜行入り…)

今朝は雨脚が強く、前回絶景を見下ろした牧之原台地への坂道からは、富士山はおろか、大井川さえ満足に眺めることができません。

豪雨

バスは我々だけを乗せ、途中乗客を拾うこともなく、ものの十数分で空港へ到着しました。
運賃400円は、乗車時間と比べるとやや割高感があります。

ちなみにこのバスは案の定、蓬莱橋まで回送し、再び島田・金谷を経由し空港へ戻ってくるようです。
蓬莱橋の出発時刻は10時24分。歩いても十分間に合いそうです。
(ちなみに金谷経由で島田へ戻るバスは11時半までない、不条理)

空港へ向かう道
空港着

富士山静岡空港は2009年に開港し、コロナ前はインバウンド客に重用されていたようですが、今日は閑散としています。
この空港の真下には東海道新幹線のトンネルが通っていて、新駅を作ろうという機運もありましたが、元県民としては、新幹線に乗ったらば、おとなしく羽田や名古屋まで出た方が路線も便数も多くて有利だろう(即ち、静岡に空港は要らんだろ…)と思っていました。

念のため、空港アクセスバスをくまなくリサーチします。
現時点では鉄道でアクセスできない空港であるから、バスへの期待値は高い…と思っていましたが……

本命の島田直行便は1日2本、始発が13時45分…
島田宿の次、藤枝駅行きは11時半…

実態としてはマイカーアクセスが主流のようで、バス路線は貧弱そのもの。
メインと言えるのは概ね90分毎の藤枝駅ルート位なもので、島田行も静岡行(高速バス)も、片手で数えられるほどの便数しかなく、がっかり。

おとなしく、蓬莱橋方面へ歩き出します。
それにしても、空港へバスで来て何もせず徒歩で去る、とういうのはなかなかシュールです。
何やってるって、こう見えて上京中なんです。キリッ
しかも、隣にいる人は、昨日まで東京にいたんですよね。

こんにゃく会話

改めて地図を凝視して気付きましたが、空港から蓬莱橋へ向かうためには、滑走路を大きく回り込む必要があります。
そのため、直線距離なら4~5km程度のところ、7km以上歩かされる羽目になるようです。
(なら最初から歩いて島田行けよと、それを言っちゃぁおしめぇよ…)
ただ、地図上では、大井川へ至るまでの間に湯日川が刻んだ谷があり、その谷筋をバス路線を示す点線が通っています。

あわよくば、ここでバスにありつければ幸せです。
そう上手くいくことはめったにありませんが。

空港の外周道路

幸いにして雨は上がり、日差しもない中、牧之原台地を下っていく道のりは快適そのもの。
中間管理職同士、会話も弾みます。
上からはど突かれ、下からは刺され…中間管理職の悲哀は、中間管理職にし分からないのであります。
個別具体的な事象から、抽象概念、人事のことまで悲喜こもごも。

ここでの会話そのものは、明日の売上にはなりません。
カロリーゼロ、栄養ゼロ、でも胃腸は綺麗になる。まるでこんにゃくのようなものです。
でも、長い職業人生を歩み続けるためには、縦横の繋がりを越えた間柄での、そんな時間が必要です。
こんにゃく会話。
旅人、そしてサラリーマンにとって一番の娯楽は、やっぱり会話だよなぁ。

湯日川の刻んだ谷へ
バス停発見!!

…と、不意にバス停が現れます。
「本村」、時刻表を見ると…あれ?
10分後に来るぞ…??

前回の「菊川の里の奇跡」再び。
すごいぞ、島田市コミュニティバス。
しかも、また例によって●がついている!
島田では●がついていれば土日運行です。おめでとう!

運良くバスを引き当て、一挙島田駅へワープできることになりました。
今日もツイてる予感です!

谷あいの小さな集落へ、きっちりバスがやってきました

本村は車庫も反転地もない道端のバス停ですが、一応終点でして、そのまま折り返し待ちの時間調整を行います。
島田駅までは所要25分。確実に歩くより早いです。そして楽です。
それでは、窓を全開にして心地よい風を浴びながら、本日2本目のバス旅です!

52本目
島田市コミュニティバス 湯日線 島田駅 行き

本村9:45発→本通三丁目東10:19着
400円

島田で足止め

バスでなら、越すに越されぬ大井川も今は昔

バスは一旦藤枝市域に近い六合駅へ立ち寄るも、その先が繋がるかは分かりません。
東海道はここからさらに東へ続いていますが、我々はまず島田宿を訪問しなければなりません。

宿場最寄りのバス停は駅の手前「本通三丁目東」。
降りて真ん前が本陣跡、上出来で、引き続きご機嫌です!

23.島田宿

本陣3軒、旅籠48軒、人口6,728人。
川越会所など当時の様子を再現した大井川川越遺跡が見どころで、川会所跡などを復元しているが駅からは離れており、今回は素通り。
昔は島田と言えば大井川東岸のイメージだったが、合併により金谷や川根も市域に含まれ、大井川流域の広い範囲が島田市となった。

中本陣村松家跡
下本陣置塩家跡

島田宿→藤枝宿

さて、ここから藤枝方面へ向かおうと思いますが、東行きのバス停がすぐに見つかりませんでした。
情報収集も兼ね、一旦島田駅へ向かいます。

島田市は人口9万4千人。14万人の藤枝市、13万人の焼津市に及びませんが、静岡駅からやってくる列車の3割ほどが当駅で折り返すため、JRユーザーには知られた町かもしれません。

ちょうど島田市境、小夜の中山峠の辺りが静岡県の中西部の境目となり、方言や食文化が変化します。
島田宿は大井川東岸ですが、市町村合併で旧金谷町や旧川根町も含まれたため、今の島田市は大井川中流域を丸抱えしています。

地球上でもっとも緑茶を愛する街!
島田駅コンコースに溢れるお茶愛

時刻は10時半。
ここで困ったことに、肝心のバスが見つかりません。

東海道を東進しようにも、先ほど乗った湯日線が一番東へ行くようですが、六合駅まででその先はありません。
途中でバスが拾えるかもしれませんが、なければ藤枝駅まで5km、1時間強の徒歩。
次発は12時5分。

静岡空港へ行ければ藤枝行きが出ていることは確認できていますが、空港行きのバスも14時25分までありません。
ちなみに、蓬莱橋から来て金谷駅経由で空港へ戻る、朝一番に乗車した「富士山静岡空港金谷線」の金谷経由空港行きは10分ほど前に出たばかり。

これに乗れたら前代未聞、同じコースを2度通るという、ちょっと面白い?事態になりましたが、次発は13時半。
いずれも、待てません。

消去法的に導き出されたのが、一旦海沿いの相良町方面へ向かい、途中東名吉田インターの辺りで藤枝方面へ向かう路線へ乗り継ぐルート。
すんなり繋がるかは分かりませんが、マップルを見る限り、相良から藤枝へ向かう路線もありそうです。

この路線の次発が12時20分。
島田にはたっぷり100分ほど停滞することになりますが、他にめぼしいルートはありません。

略図/実際の経路を表しません

というわけで、少し早いですが昼食タイム。
と言っても早すぎで、なかなか開いている店が見つかりません。
踏んだり蹴ったりだなぁ……

しばし彷徨った挙句、見つけたのは駅の次のバス停「島田三丁目東」からすぐの「食道園本店」さん。

レトロなファサード
レトロな店内

開店より少し早かったと思いますが、快く入れていただけました。
昭和レトロな焼肉屋さんですが、ランチのビビンバがめちゃくちゃおいしい!

カルビ入り石焼きまぜめし800円。うそだろ…


たっぷり時間があるというのに、あっという間に平らげてしまいました。

時間が余るので、続いて喫茶店へ。
本陣跡横の「カフェリラ」さんは本日がオープンだったようで、きれいな店内でおいしいコーヒーを堪能。

今思えば、ちょっとこれは食いすぎ、飲みすぎ。
気を抜いて調子こきました。後ほど報いを受けます…苦笑

しかし。
あさイチで金谷に入って、次の島田宿でもうお昼とは。

正直、金谷から島田は歩けば1時間ちょいで来れるわけで、せっかく夜行で移動した挙句、この体たらくは何なんだと思わんでもないです。
こんなことで本当に目標の由比へたどり着けるのか。

…でも、まぁ、仕方ないのです。
むやみにジタバタしてもろくなことにならんことを、我々はこれまでの東海道バス旅を通じて学んでいます。
バスの女神が司る運命にただ、身を任せるのみです。

結果的に、雨に降られず濡れもせず、僅かな歩きのみでここまで来ているのだから、ツイてるんです。
現実は受け止め方次第で、幸福になるし不幸にもなる。

中編へ続く。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です