4日目-その3 片上宿→岡山宿 山陽道路線バスの旅(2023年9月18日)

三石宿→片上宿

2時間の長い待ち時間を経て、待望のバスに乗り込みました。

エアコンの調子が良くないとのことでしたが、その程度のことは、我々にとっては何の問題もありません。
先に進める、それだけで万々歳、だって、バスの本質は移動することですから、空調とか乗り心地とか接客とか、それ以外の何かを求めることがお門違いってもんです(要求水準がめっちゃ下がっている)。

さすがに暑い
窓には子どもたちお手製の装飾が施されている

ちなみに、運転手さんは、時刻こそ分からないが、片上からは岡山までバスが繋がっていると教えてくれました。
ここ2日間、停滞が目立ちますが、ここらで一発、起死回生の逆転ホームラン(バス)をぶっ放したいところ。

憧れの閑谷学校をかすめ、あっという間に伊里中へ到着。
ここからは海へ向かって一直線の徒歩行軍です。

途中、軽いサミットがありましたが、下りに転じてからは早かった。
片上から先に向かうバスの時間が分かりませんから、一刻も早く着きたい。
次の藤井宿は岡山市内、ここさえ乗り切って県都・岡山に近づければ、バスも比較的遅くまで走っているような気がするのです。

備前片上駅付近を通過

もう無心で、気力で歩きました。天候もすっかり落ちついて、西日が照り付けています。
それでも、有年を歩いた時に比べれば、季節が少し進んでいたし、コースも下り基調であり、何よりも、我らの脚は着実に鍛えられていました。

こんなバスに乗りたい!

歩行中、常に気になっていたのは次のバスです。
根拠はありませんが、片上に16時に着くことを目標に歩きました。16時頃に、岡山行があるというイメージ。
イメージだけですよ。でも、何となく、そんな願望?妄想にも近いイメージを持って進んでいきました。
そして、4kmを45分で踏破して15時50分、無事、備前市街地へ到達しました。

さほど頑張って探さずとも、国道沿い、片上宿本陣跡のすぐ近くに宇野バスの「片上」バス停はありました。
そして、気になる発車時刻は……?

16時15分の岡山駅行き!
しかも最終!

ぬおおおおおおおおおおお~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!

やっ、やってやったぜ!!!!!

輝く「岡山駅」の文字
ぴかぴかに輝くバス

これぞ、汗と執念と根性で勝ち取った逆転満塁サヨナラホームランだ!!

ヒーローインタビュー来い!!!

――ビハインドの展開の中、ランナーを置いてのバッターボックス…もとい、バスストップでした。どんな意識でしたか?
「絶対三振したくないと思いながら、バス停に入りました。」

――結果的には最高の1本。思い漕がれた岡山駅に飛びこんでいきました。手応えはどうでしたか。
「そうですね、見た瞬間、あ、これは行ったな!と思ったので、よかったです。」

――山陽道編では7月15日名谷→明石以来のホームラン。ファンのみなさんも待っていましたよ!
「えぇ~、ファンがいるかどうかはアレですけど、アマチュアとしてここまで続けてきて、本当に良かったです。」

――今後の長旅に向けて一言お願いします!
「…そうですね。ここのところちょっと厳しかったんで、そんな中耐えてやってきてよかったと思うし、あとは岡山の手前にある宿場にどうやって行くのかがちょっと気になってますね!」

17.片上宿(かたかみ)

かつては入海潟であったことから「潟上」と書いていたのが、いつしか「片上」に変わった。港からは、地域の特産・備前焼が積み出されていたという。
片上のバス停があるところは旧片上鉄道の片上駅跡で、1991年まで山陽本線の和気を越えて柵原鉱山との間を結んでいた。

そう、気になるのは次の宿場町です。
一応、文献によっては「一日市(ひといち)」をカウントしているものもありますが、一里塚が残る程度なので今回はパスします。(結構、この辺りが微妙に悩むところです。間宿とされていたり、本陣跡があったり、あっても何も残っていなかったり、何が正解かは時代にもよるのではっきりしない)

すると、次は藤井宿となりますが、問題は、どうやって行くのか、です。
今いる片上はJR赤穂線沿線ですが、藤井は北回りのJR山陽線および国道250号線沿い。
JR赤穂線や国道2号線はかなり南方へ行ってしまいます。

ただ、これは杞憂に終わりました。
運転手さんに聞くと、あっさり「藤井は通りますよ」とのご回答。
なにしろ、この片上~岡山の路線名はズバリ「国道2・250号線 」、親切にも旧山陽道のルートを忠実に走っていくのです。

これぞ、文句なしのホームランバス!

片上宿→藤井宿

5本目(通算36本目)
宇野バス 国道2・250号線 岡山駅 行き

片上 16:15発→藤井 16:51着
490円

というわけで、ウイニングラン…の一本手前ですが、無事岡山行きが決まりましたので、一安心です。
このバスは片上発の最終バスですが、藤井からは別の路線が合流して後発のバスがあるようですから、ゴールは堅いのです。

なお、今お世話になっている宇野バスは、バスオタクたちの間では独特な事業者としてよく知られています。
両備、岡電、中鉄、下電とバス事業者が林立する岡山にあって、天満屋ではなく表町に独自のバスターミナルを構え、低廉な運賃とゴージャスな内装、五連のマーカーランプといった個性的な車両、ぴかぴかに磨き上げられた車体に(エンジン)低回転でソフトな運転、WIFI完備に充電も可能と、路線バスが提供できるサービスとしてはもはやカンスト状態。
異常にクオリティが高い(のに安い)、利用者にとっては誠にありがたい路線バス屋さんなのです。

途中、片上を出てすぐの海沿いの景色から山に囲まれた大ヶ池を横目に小さな峠を越えると、吉井川のほとりに出ます。
川を渡れば長船町から岡山市に入り、すぐに一日市の一里塚が道路わきをかすめていきますが、綺麗な写真は撮れませんでした。

片上から45分ほどで藤井バス停に到着しました。国道の流れは速く、乗っていた時間以上に進んだ気がします。
赤穂から吉永まで、あれほど前に進めず苦労したのが嘘のようです。

藤井宿までは少し距離があり、次のバスに間に合うよう小走りで向かいます。

新幹線が行き交う中を進む
18.藤井宿(ふじい)

残すところ2里と、岡山城を目前に控えた宿場町だったのだが、現在は静かな農村といった風情。
参勤の際、大名は城下町での宿泊を避けたことから、ここ藤井は大いに賑わい、往時は本陣が2つもあったという。

新幹線で岡山を出るとすぐに差し掛かる藤井の風景

藤井宿→岡山宿

6本目(通算37本目)
宇野バス 国道2・250号線 岡山駅 行き

藤井 17:12発→県庁前 17:36着
250円

さて、いよいよ本日の目標、岡山宿入りです。
一時はどうなることかと思いましたが、どうにか、辿り着けそうです。

旭川を渡ると、車窓には岡山城が見えてきました。

岡山は大規模な空襲があったので、宿場の遺構はありません。
強いて言うなら、山陽道を西向きに旅してきた際に岡山市街への入口となっていた「京橋」でしょうか。
そのたもとには、岡山の道路のへそ・道路元標もあります。

19.岡山宿(おかやま)

山陽道では比較的少ない、城下町に設けられた宿場町。
岡山城は、姫路の「白鷺城」の愛称に呼応するように「烏城(うじょう)」と呼ばれている。黒塗の城の姿をしてそう言いわしめるのだが、現在の天守は1966年に復元したもの。
なお、天守は明治の廃藩置県を経て1945年の岡山大空襲によって焼失するまでは現存し、国宝指定も受けていたというのだから、惜しい。城郭は、そのまま字のごとく「小高い岡」の上に築城されたことから「岡山城」、城下町を「岡山」と言われるようになってそのまま現代に至る。
城の近傍にある「後楽園」は言わずと知れた日本三名園の一つで、江戸時代初期のころの造営。

岡山県道路元標
夕暮れの京橋。土木遺産に選定されている

歩き過ぎて疲れた相方は、先に岡山駅へ向かい次回以降の情報収集を行っています。
撮影隊の私は、しばし旭川を渡る京橋と、中洲の様子を観察しました。

山陽道(西国街道)はアーケードに吸い込まれていく

路面電車の音が聞こえるこの辺りは江戸時代に遊郭があったらしく、町家が立ち並ぶ様子はどことなく宿場町の風情が残っているような気がします。

7本目(通算38本目)
宇野バス ネオポリス線 ネオポリス東6丁目 行き

あからさまに路面電車に対抗している
岡山駅にて

表町バスセンター 18:10発→岡山駅 18:17着
100円

表町バスセンターから再び宇野バスさんに揺られ、岡山駅にやって来ました。

おおおお!着いたぁあああ!!

苦労した分、達成感がすごい。

しかし、北の方角には大きな入道雲が立ち込め、稲妻が盛んに光っています。
これは我々の先の旅の行く末を暗示しているのか?
相方からはバッドニュースがもたらされました。

岡山から先、次の板倉宿のある吉備津方面に向かうバスは、まさかの午前中は運行無し。始発が岡山駅13時25分。
少なくとも総社の駅近くまでは行けるが、その先、川辺、矢掛の各宿場に向かうバスは、確認できず。
地元のコミュニティバスなり、タクシーなりがあるかもしれないが、詳細は不明。

お、おおう!
これは、重たい課題が出てしまいました。
一体全体、どうやって攻略すればいいんでしょうね。

皆目見当もつかないまま、最後達成感もありましたが、かなり苦しかった4日目が終わります。
いや本当、一難去ってまた一難。
険しい山陽路の旅は続きます……。

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