1日目-その2 山崎宿→瀬川宿 山陽道路線バスの旅(2023年5月20日)

その1からのつづき

山崎宿→芥川宿

山崎宿を後にし、梶尾東停留所を目指して、西国街道を歩いています。

しかし、暑い。
まだ5月だというのに、夏のような暑さです。

風情ある道ですが、この時期でもうこれだけ暑いと、この先の旅の道中が思いやられるというものです。

島本町を過ぎると、道は線路沿いを進みます。
いつも列車からぼんやり眺めているこの細い道が、長躯下関まで続いていく西国街道だったんですね。

ムード満点の梶尾集落に入ると、間もなく新名神の工事現場に差し掛かります。
細い細い街道から、ビルのように巨大な橋脚を見上げると、同じ道でもそのスケールの違いに圧倒されます。
人間の移動に対する欲望と執着が、数百年のうちにここまで技術を発展させたのだなと、感慨深い気持ちです。

その工事現場の一角に、高槻市営バスの「梶尾東」停が鎮座しています。
少し前まではもっと風情ある終点だったので、そこはやや心残りです。

周囲を観察していると、ほどなくして折り返しのバスがやって来ました。
山崎まで乗ったマイクロバスに続き、小型のリエッセと言う車種で、旧街道をトレースしてくれそうな期待値が高まります。

5本目
高槻市営バス 3 JR高槻駅南 行き

梶原東 11:36発→JR高槻駅南 11:50着
220円

バスは案の定、無茶苦茶狭い街道筋を巧みなハンドルさばきで進んでいきます。

ところどころ離合困難な箇所があり、小型バスでも難儀するほどでしたが、乗客は多く駅に行くにしたがって立客も出るほど。

※残念ながら、2023年12月に経路変更、バス道は西国街道から新しくできたバイパスに移りました。

JRの線路をまたぎ、高槻駅の南口に到着。
次のバスを検討します。

まず芥川宿は、高槻駅から徒歩圏内です。
その次は茨木市内の郡山宿で、国道171号線沿いにあります。

高槻・茨木間は、JRでも阪急でも快速や特急に乗れば1駅、10分もかからないような距離感です。
しかし、鉄道での利便性が高すぎる区間は、往々にして直行のバス便がありません。
そして、以前にこの間を鉄道線に沿って富田経由で繋ごうとした際は、本数が少なすぎて文字通り「とんだ目」に遭っています。

この反省を踏まえ、今回は大きく迂回していくことにします。
街道旅ですが街道にこだわりすぎると詰む 笑

日常的にこのあたりをクルマで回っている営業職の相方曰く、枚方から茨木へ向かう県道を通るバスを何度も見たことがあるというので、そのルートへ近づけそうな柱本団地行きに狙いを定めます。

すると、およそ30分後に出発できることが分かりました。
急いで芥川宿へ向かいます。

高槻の市営バスはこんな色
芥川商店街

伊勢物語に出てくる「芥川」は、今もすぐ近くを流れています。
宿場名は高槻ではなく、芥川。
一方、現市名の「高槻」は、室町時代に高さは60mにも迫る大きな「槻」の木があったことから付いたようです。

ちなみに、バスの前部に掲げられている高槻の市章は、大阪と京都の市章を足して2で割ったものであると市の公式ホームページにも堂々と記載されいます。

2.芥川宿(あくたがわ)

ターゲットは大阪府史跡の一里塚。
綺麗に開発されたJR高槻駅北口ですが、一歩入るとゆるゆると曲がる昔の街道らしい道筋が残されています。
一里塚跡の前には、仇討ちの物語が書かれた看板があります。
なんでも、300年前、勘違いで暗殺された親の無念を果たそうと、14歳の助三郎少年が芥川の旅籠を発った仇を討ち、また討たれた方も自らの過ち故に討たれてもやむなし、討った者に咎がないことをしたためた書状を持っていたとのこと。
サムライズムだ。

一里塚

駅に戻ると遭遇した見慣れないこのバスはどこの会社?と思ったら、高槻市営バスの復刻塗装なんですね!

芥川宿→郡山宿

6本目
高槻市営バス 22 柱本団地 行き

JR高槻駅南 12:28発→唐崎西口 12:50着
220円

バスは座れないほど混んでいます。
そして、途中の停留所からもどんどん乗ってきます。
大抵の路線は駅から遠ざかるごとに乗客が減りますが、ここは違います。
北摂の中心都市・高槻市の都市としての勢いを感じますね。

さて、ちょうどお昼時ですが、バスが繋がる都市部では昼食をとるタイミングが実に難しい。

繋がっているうちはどんどん繋いでいった方が良いのは分かっているのですが、いかんせん腹が減るのは精神衛生上よろしくない。
バスが繋がらなくなったところで食料補給ができるとも限らず、空腹は単純にテンションが下がります。
コンビニ飯は味気ないから嫌なんですよ。

一方、そのタイミングを間違えて重要なバスを逃したことも一度や二度ではありません。
とは言え、今日は歩きも挟みましたが順調に進めている印象はあります。
そもそも、どんなに進んでも神戸、その間ずっと都市部を行くわけですから、この先にそんなに難しい関門も思い当たりません。

いい具合に店があれば入ってしまおうという魂胆が互いの胸中に湧き上がってきます。
こうなると止められない。

「やっぱり昼飯は大事ですよね」
「これは遊びなんだから、我慢する必要はないよね」
「やっぱり、楽しまないとね!」
「あのラーメン屋さんに行こう!」

あれあれあれ。
次のバスの時間も確認せず、丸源ラーメンに吸い込まれてしまいました。

「並んでるから、早く入った方が良いよ!」
「ちゃちゃっと食べて、すぐに行けば茨木行きはたくさん走っているから!」

かくして、我々はここで本日最大のミスを犯しました。

が、気付くのはしばらく後のことです。

満腹になったところで、ゆったりバス停へ向かいます。
バスは4本/時と頻発。
見事、高槻茨木間が繋がったのは、相方の日ごろの営業の成果?ですね。

7本目
京阪バス 7 JR茨木 行き

西切 13:42発→ JR茨木 14:08着
230円

京阪バスは淀川の南側がテリトリーですが、ここ茨木と高槻には川を渡り越境してくるルートがあります。
昼下がりの車内は乗客も多く、それだけ移動需要が旺盛なことがわかります。

それにしても、京阪バスには毎日通勤で乗っているため旅の実感があまり湧きません。
お腹いっぱいなのもあって、いつしかウトウト、気が付いたら駅に着いていました。

茨木駅のバス乗り場は広大ですが、歩道橋から「島」に降りる階段は封鎖されており、乗り場の数そのものは全盛期に比べたらかなり絞られているようです。

8本目
阪急バス 93 石橋阪大前駅 行き

ちょっと懐かしい内装を持つ2007年式KV234
緑の椅子と木目の化粧板は阪急電車と共通のアイデンティティ

JR茨木駅 14:30発→ 宿川原 14:43着
230円

ここからは石橋阪大前駅のバスが出ており、再び国道171号線に沿って進めます。
茨木の先、鉄道はJR・阪急のいずれも大阪を目指していくため、西国街道に沿う線路はありません。
こうなると、これまでは鉄道を補完する役割だったバスが、俄然公共交通の主役に躍り出ます。
郡山宿と瀬川宿の少し先まで、少なくとも20分間隔でバスがやって来るため、しばらくは楽々街道バスハイクです。

さて、バスに乗ったはいいものの、渋滞が激しく駅前のロータリーから抜け出せません。
夕方でもない中途半端な時間帯ですが、この混みよう。
茨木駅周辺は、普段から渋滞がひどく、どうしようもありません。
割と近いところに名神のインターもあり、車が集中しやすい構造なのでしょうね。

バスは所定ダイヤより10分以上遅れて、郡山宿最寄りの「宿川原」に到着です。

3.郡山宿(こおりやま)

神戸までの西国街道で唯一の江戸時代から現存する本陣(享保6年:1721年の建築)。
西宮へ至る山崎道区間ではちょうど中間に位置する。
御成門脇の樁が美しく咲いたことから「椿の本陣」の愛称を持つ。

立派な建物ですが、中を見ることはできません。
コロナ禍で閉めてからそのままなのよ、と近所のご婦人が教えてくださいました。
残念な気持ちもありつつ、しかし20分で次のバスが来ますから、仮に開いていたとしても我々は入場できなかった気もします。

郡山宿→瀬川宿

9本目
阪急バス 93 JR茨木 行き

宿川原 15:03発→ 半町 15:34着
220円

今度のバスは5分程度の遅れでやって来ました。
しかし、箕面市内・稲あたりからまた渋滞につかまり、なかなか進みません。
ずるずると遅れが拡大していきます。

途中の乗降は多く、普段使いの大学生や高校生くらいのグループの区間利用が印象的でした。
高齢者ばかりがぽつぽつと乗っているだけではなく、乗客の年齢層が幅広いと、町や地域に活気が感じられます。
そして、この路線はしばらく安泰だなぁと勝手に安心します。

結局、宿河原からのバスは15分遅れで瀬川駅最寄りの半町(はんぢょう)へ。
ダイヤ上は20分間隔ですが、次のバスはいったいどの位遅れているのか?意外と早く来て置いていかれたら大変です。
足早に宿場跡へ向かいます。

3.瀬川宿(せがわ)

古くは鎌倉時代末期に合戦があり、ここ瀬川に陣を構えた六波羅探題軍は破れ、幕府滅亡へ繋がったそうです。
瀬川はその頃から既に宿場として栄えていたようです。
現在、本陣跡には看板と自動車学校が。
最盛期には計2軒の本陣と何軒もの旅籠があったようですが、いまその面影はありません。

2度お世話になってきた93系統の終点・阪急石橋駅はすぐ近くですが、歩くよりは乗った方が早いだろうということで、再び半町へ。
ハラハラしながらバス停へ戻ります。

その3へ続く

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